(update:2009.6.)注:こちらは古い情報です。
内容は本当にそっけない分類。
前回と異なり、障害というものは、健康状態と背景になる因子*との相互作用だとの見方をしている。
*:文化、社会通念など環境的なものや個人の立場など個人的なもの、複数がからんでいる場合もあるだろう
そこからは、社会参加に関して、一般に考えられている「障害」に含まれないことも「障害」と考えることができること、
例えば、身体が健康と違うために制約があることばかりではなく、
人種や生まれた場所で差別されることも、社会参加の「障害」になるという観点が得られ、興味深かった。
なお、前回よりも、内容が複雑になっているため、簡単に解説することができない。
その中で、事例として例示されていたことは、読んでいて納得できるところだったので、抜粋する。
5.4 事例
(1) 活動の制約も参加の問題も伴わない機能障害:
手指の爪を欠く子どもが産まれた。この奇形は構造の機能障害だが、手の機能にも手を使っての活動の遂行にも影響を及ぼさず、能力障害はない。欠けているのは小指の爪なので気づかれない。したがって、この奇形のために他の子ども達からからかわれたり排斥されたりすることなく遊んでいることに見られるように、参加の制限(不利益や問題)はない。
(2) 活動の制約はないが参加の問題を伴っている機能障害:
糖尿病をもつ人は機能面の機能障害をもつ:膵臓がインスリンを生産しない。若年性糖尿病はインスリンの薬物療法で管理できる。インスリンのレベルが制御されていれば機能障害に伴う能力障害はない。しかし若年性糖尿病をもつ子供が砂糖を食べられなかったり仲間との会食に参加できなければ、おそらく参加の問題を経験する。
もう一つの例として、顔に白斑がありその他の病気はない人があげられる。この容貌上の問題は活動の制約は生み出さない。しかし人々が白斑をハンセン氏病と誤解し伝染すると考える場所にその人は暮らしている。このため社会関係への参加の大きな制限が生まれる。
(3) 活動の制約を伴う機能障害で、境遇により参加の問題を伴ったり伴わなかったりする場合:
正常範囲より低い知能は機能障害であり、その人の活動のなんらかの制約につながることがある。機能障害や能力障害以外の因子が、いろいろな生活領域で、あるいはいろいろな境遇のもとで、その人の参加の程度に影響する。例えば、標準以下の知能の子どもは、一連の簡単で必要な作業を行うことがもとめられる地方の田舎環境ではほとんど不利益を経験しないであろう。同じような子どもが都会で大学卒の親のもとに生まれた場合には、いろいろな複雑な社会的状況の中で、また高い教育期待の雰囲気の中で、参加の制限を経験するであろう。
(4) 以前の機能障害が、活動の制約は伴わないが今なお参加の問題を生み出している場合:
能力障害なしで参加の問題をもっているいちばんはっきりした例は、急性の精神疾患から回復したものの「精神病患者」であったという烙印をおわされている人である。このような人は就職や社会の受け入れを拒否されることがある。
(5) 異なった種類の機能障害や活動の制約が似たような参加の問題につながる例:
ある人の四肢マヒという機能障害がいくつかの作業課題の遂行を不可能にするために、その人がある職に雇われないという雇用の領域での参加の問題が生まれることがある。より軽い四肢マヒをもち必要な作業課題をこなせる人が、障害者雇用の割当ては満たしているという理由で雇用されないこともあり得る。必要な作業課題をこなすことのできる他の人が、車椅子の使用によって軽減される能力障害を持っているものの、職場が車椅子で入れないために雇われないということもある。他の車椅子使用者で作業課題をこなせる人がその職に採用されたものの、車椅子では職場内の休憩場所が使えず、同僚との関係などの雇用関連の参加の制限を受けるということもある。この雇用の場での社会的交流の制限は、職業面の昇進機会へのアクセスを阻害するかもしれない。
(6) 機能障害が疑われ、活動の制約はないが参加のはっきりした制限につながる場合:ある人がエイズ患者への援助を行ってきた。この人は他の点では健康だがHIVの定期的テストを受けねばならない。この人に活動の制約はない。しかしこの人を知る人は、この人がウイルス感染を受けたと疑い、彼を避けている。このため重大な社会参加の制限が生まれている。
(7) 本ICIDHに分類されていない機能障害で参加の制限につながるもの:
ある人は乳ガンで死亡した母をもつ。彼女は45歳で、最近自主的に検査したところ乳ガンにかかりやすい遺伝情報を持つことがわかった。彼女は身体の機能や構造に問題なく活動の制約もないが、乳ガンの危険性が高いということで会社の健康保険への加入を拒否された。
最後の例、活動の制約はないが、保険加入を拒否されることで社会参加の制限になるとのことが、とりわけ印象的だった。
参考:国際障害分類第2版 フィールドテスト用草案 (http://www.dinf.org/doc/japanese/intl/icidh/hsa001/hsa00101.htm)[←もどる]|||||[手帳制度に関して]