第45回 小児循環器学会(連携と協調から調和へ、そして、こども達によりよい未来を)
2日目の看護セッションを聞いた。
チャイルドライフスペシャリストの講演が印象に残る。
大人の速度、専門職主体で進む病院での検査や治療に、子どもの立場の視点を伝える方。
病院で行われることは子どもにとり辛いことも多く、自己評価も低くならざるを得ない中、不安などを軽減してその子本来の力が発揮できるように支援しているそうだ。
病院の中だけ特別でいいのかと疑問もあったが、病院自体が特別な場所だし、病気の人の受け入れを拒む未熟な社会というのはまた別の問題、できるところからしっかりと活動していることを感じ取り、実際に話を聞く機会を得て力づけられた。
病院探検ツアーなどをしているそうだが、10歳までは五感で感じ取るので実際に体験させた方がいい、写真や文で説明するのは高校生ぐらいから、という話があり、自分の経験からとても納得した。自分が入院していた時にこのような方がいたらと様々な感情が湧き、気持ちの代弁者に出会うことができ救われる思いがした。
他には、先天性心疾患への理解を深める催しを横浜の病院で行っているときき、参加してみたくなった。患者や家族だけでなく地域の人も参加するそうで、理解が広がる一助になればいいと感じた。
患者会の役員が、成人患者を対象に行ったアンケート結果を抜粋して発表していた。このような発表はこれからも行ってほしい。会報にも結果を載せてほしいと思った。
病院の中のことや治療のことばかりでない話題は身近に感じられる。<
学会は密度の濃い内容で消化不良になりがちだが、看護の話題は共感できることが多く、話を聞くことで勇気を得た。
第11回成人先天性心疾患研究会成人患者専門の外来で行われている心理面接室の利用状況の発表があり、相談内容を年代別にみると、20代は周囲との葛藤、20〜30代は仕事がないことや自立ができないこと、40〜50代は孤独や体力の不安が主な内容で、女性の相談者が多いという。
担当の心理士は、回答は本人が持っている、生活しやすいようにする、その人の気づきを促す支援をする、というスタンスでいるとのことで、踏み出せないことの多い相談者の肩を押している様子。
必要性が言われながら外来に心理士がいる病院がないのは、医療制度で心理士の役割が認められていないためで、意欲ある人の力があるからこそでできているという現実がある。
相談内容は一般の人の悩みと重なるように思い、病院で行う必要性はどれだけあるのかと疑問も湧く。患者は病気の部分を周囲からないがしろにされたり、伝えて不利な扱いを受けたりすることが多いので、病気も含めた人として関わる伴走者が必要なのではないか、身近にそのような人がいないために心理士がその役割を担わねばならないのではないかと感じた。
前回までの東京開催から、今年は岡山での開催という新たな段階に入り、最後に一般向けの公開講座も行われた。
二人の専門医の講演は、内科と外科、それぞれの視点の違いがみられ勉強になった。
また、二人の患者の話があり、子育て中の女性からは家族などの協力を得ながら頑張る姿、ポジティブ思考の男性からは発想の軽やかさを感じた。
ただこういう場での患者の話は成功体験になりがちで、今いくつかの悩みが絡まる只中にいる者は、めげながらも前に進んでいる人の話をききたいと思う。
自分の身と引き比べてしまうからそう感じるのかもしれないが、やはり話題にふさわしくないのだろうか。その辺りは患者を生きる人と周囲との感覚の違いなのかもしれない。
とはいえ、研究会の意義を一般の人が感じることのできる企画、今後もこのような機会があるといいと感じた。
第44回 小児循環器学会(いのちを育む;発生から加齢の循環器、そして心)
3日間、発表やシンポジウムが満載の専門医の学術集会。
今年は患者も参加すると聞き、一日半ほど参加し、様々なことを感じた。
★シンポジウム:心に響くインフォームドコンセント
小児科、外科、看護師、患者、心理学者、それぞれの話と、最後に全体のまとめ。
科学がどういうものか、患者と医者の違いを示した話。一般に思われているのと違う科学の姿、そこから誤解も生まれるのだろう。病気に向き合う者同士であっても、患者と医師は立場の違いというか位置の違いから触れ方が違う。それをどうしたらいいか、は、双方が感じていることと改めて思う。
医師のコミュニケーションスキルの評価の話。今は患者へ説明した後の事後評価がなく、説明は個々の裁量で行われるようだが、きちんと評価して高める手段があればと感じる。
外科医の話。厳しい状況での説明、全くフィールドの違うところにいた患者家族が医療者と一緒に進まねばならないこと(先生の観点・用語は、慣れない・受け止めづらいもの、なかなか理解できないけれど)、その難しさの中で努力しておられる様子を知った。たくさん書き込みのある、実際に使用した説明文書を示された時、今はこんなふうに説明されているのだと、安心というか、昔とは違うのだと改めて思った(手術時は子どもで、自分で説明は受けていないが、医師の書いたメモ的な説明を親からもらった私には、あのようにしっかり書かれていれば先生の思いが伝わり、いいなあと感じた)。
看護師は、手術を受けた病児の母親への研究から、医師との危うい信頼関係で成り立っていることを指摘していた。
患者は、インフォームドコンセントといってもよくわからない、家族は医師のしぐさから人柄をおしはかって信頼する、親と本人では違う、説明は一回きりでなく時間を空けることも必要、家族は病院外でも頑張っている、など話した。それぞれに深く頷きながら、場に慣れていない方が、堂々と思いを伝えている姿に勇気がわいた。
心理学者は、異文化理解、違うからこそコミュニケーションが必要だと指摘していた。
同じ話題に対するそれぞれの視点、感覚の違いを感じながら、場を共有する機会、患者が医療に関わる者として話す時代がきたのだなあと感慨深かった。
★会長講演
長年の小児科医の経験の中で感じたこと。治療が難しかった時代の母親の悲しみを胸に刻んで来られた先生の想いに感銘を受けた。
患者だけでなく家族のことも視野にある小児科医の立ち位置がはっきりとみえた。
通院(診察)だけでは感じられない医師の別な面に触れることができて、様々な思いが浮かんだ。
★大江健三郎氏の講演
よく理解できていないが、最後の方の話しが印象に残っている。
政治的な状況の厳しさ(生死に関わる、時として自身が脅かされるようなもの)をみてきた亡き友人が、人間がやっていることだからいつか解決すると言っていた、苦しみを知った上での楽観、という話をされ、ああそれは大事だなあと思い、共感した。
大変な状況で楽観できたら何よりも強いだろうし、その心持ちになれたら悩みが軽くなるのではないか、そんな境地にいきたいと思った。
★講演:心臓移植といのちの論理
とても興味深く、刺激を受けた。まとめられないので、別ページにメモを記した。(
講演メモから)。
★看護セッション
思春期以降の患者に関する研究に、患者の気持ちを拾うものがいくつかあり、頷きながら聞いていた。
実際に生活をしている患者からみると、問題の立て方、視点の位置取りが違うものだなあと感じながら、
真摯に向き合っている方の姿に力づけられた。
★シンポジウム:術後の心理的問題
影響する要因が様々ある中、一つ一つ探っているような内容といった感がある。
Fontan術後の方を対象にした調査の発表で、調べた背景による差はなく、個人差が大きいといった内容があった。
同じ手術というくくりではなく、切り口を変え他の類似点(例えば社会参加の有無など)でまとめるとよいのでは、
同じ手術を受けた人に類似点は多いのだろうが、医療者の目前にあるものから見ているのだと感じた。
病状よりも他の環境による違いの方が大きい気がしていたので、そう感じるのかもしれない。
この手の発表は同じ属性の者が聞くと複雑な想いが沸くが、患者の力になるものを見出されるよう願っている。
★妊娠出産
発表者は、産科医や心理の方、看護師、患者。様々な立場の方の力が必要なところだと実感しながら聞いた。
成人先天性心疾患の外来専門の看護師の発表に、医療側に手があることで患者もずいぶん助かっていると感じた。
同じような体制が広がるといいなあと思う。
出産経験者へのインタビュー調査の発表は、患者の気持ちが伝わる丁寧な内容だった。
出産した患者の方もご自身の体験を発表され、産科に知識がなくて起きたエピソードや育児の大変さなど、実感のこもったお話しに、
出産できるといっても、周囲の協力などよい環境を得て、初めて子育てに専念できるのだとしみじみ感じた。
海外の先生の講演や勉強会など休む間もないスケジュール、どれも密度の濃い内容、ついていくのがやっと。
消化するにも時間がかかったが、ずいぶん勉強になり、専門医の仕事の成果や考えも実感できた。
患者として病院に行く時=医療との関わり=はたいてい個人的なことがメインでそこに気持ちが向かうので、いつもと違う観点が得られる、貴重な時間だった。
第10回成人先天性心疾患研究会フォンタン術後遠隔期がテーマ。医学的な話題が多い中、1日目の午前の話を聞いた。
成人の診療に関して、循環器の専門病院に行った診療体制の全国調査(アンケート)で、治療や妊娠出産の管理の経験がある場合でも数が少ない病院が多く、成人専門の診療の難しさを改めて感じた。
北海道の小児循環器医がいない地域では、患者は出張診療を受けていることを知り、医療過疎の実情を感じさせられた。
インターネット等を活用するにしても、利用するにはスキルが、システムをつくるには費用が必要で、そういう面に患者はなかなか思いが至らないと思いながら、自分の経験が役に立てばと考える患者と一緒に現状の中でできる工夫はないのだろうかと考えさせられた。
第9回成人先天性心疾患研究会要望演題は、社会的問題。
1日目午後からの妊娠出産、社会・心理的問題の話題を聞いた。医学的でない話題には自分の経験を重ねながら、感じることが様々あった。
妊娠に関しては、先生方の経験が年々増え、慎重さも少し変わってきたところがあると感じられた。
それでも、難しい状況の出産例に、チャレンジしたいと思われるかもしれないが、大変であることを忘れないようにといったコメントがあった。
やりとりの中で、気がつかなかった先生方のご苦労がよくわかったが、妊娠出産に対する捉え方が違うことも感じた。
死んでも産みたいと願う方が、カテを怖くてやりたくないことに対して、どうしてなのか(産むのは怖くないのか)先生は疑問に思われていた。
産むこととカテとはまったく別の話で、身体への負担の大きさではない(本人にとっての意味の違いが大きいのでは)、安易に出産できると思うのでは決してないはず
と感じたが、フォローがなかったので残念だった。
就業状況では、心機能が悪い人や知的障害、精神疾患が悪い方に影響するという。改めて、厳しい方のおかれる立場を考えさせられた。
心理的問題に関しては、どんな傾向があるかといった話題などで、患者の強い力になるのはまだこれからという印象だった。
心理評価は、それぞれ背景の異なる人に対してどうするかが患者にとっては大事なので、使い方が重要になるし、一面で捉えると見落とすものがあると感じ、医療者側の観点だけではなく、様々な要素をきちんと検証していただけたらと思った。(心理的介入は、毒があり加減の難しい薬と同じもののように思うので、安易なハウツー対応にならないように願っている)
患者の家族のことも考え、その関係に迷っておられることを感じさせられる発表もあった。
興味深い内容が多く、考えさせられ、6時間余りがあっという間に思えた。予定時刻を2時間あまり過ぎての終了は最長だったのでは。
先天性心疾患の方のための 妊娠出産ガイドブック (編著 丹羽公一郎/中央法規出版)
患者9人の体験記と、専門医の病気のわかりやすい解説・Q&Aをまとめた本。
体験記では、病状も家族の環境もそれぞれ違うなあと感じさせられ、それぞれに共感するところがあった。
ご家族や周囲の方、産婦人科の関係者にもぜひ読んでいただきたい。
病気と向き合うのは大変なこともあるけれど、若い方にはパートナーとの将来を考える頃から、手にしてほしい。
巻末には情報集も。2006/11出版。
成人先天性心疾患 (新目でみる循環器病シリ−ズ )
2005/09に出た、循環器の医学書のシリーズの一冊。
最近の見解が簡潔に詰められている。
よいこと、厳しいと思えること、いろいろあるが、こういうものを見ると
客観的で、自分の身から少し離して見られるので救われる時がある。
本を見て頭で理解していても、医師に告げられたり
自分の身に症状が起きた時には、動揺することもある。
でも、それはそれとして、力になる場合があるのも確か。
(お守りというか、気が落ち着けばと、たまに大書店でめくっている)
第8回成人先天性心疾患研究会中年期を迎える患者の問題点がメインテーマ。
例年テーマに合わせてシンポジウムが開かれるが、
テーマに沿った内容の発表を集めるかたちで行なわれた。
(ここに書けるまでは内容を聞き取れなかった。)
検査の結果をどう見るか(捉えるか)との論議が交わされていて、
同じ結果でも、見方により違う判断になることもあり得ると改めて感じた。
狭いところに目を向ける若い先生の発言に
患者さんは好きでチアノーゼになったのではないのだから、と
大ベテランの先生がたしなめる場面があり、
当たり前のことなのだけれど、ほっとする思いだった。
小児看護 '05.8月臨時増刊号小児難治性疾患のキャリーオーバーと成育医療
「日常生活がより豊かになるために」 と副題のついたこの号は、成長期から長期にわたり医療が必要な患者の直面する問題を広く扱う内容。
医師、看護師、心理士、社会学者、そして大人になった患者と、様々な立場の人が書いている。
恥ずかしながら拙文も掲載されている。患者としてもう一方、同年代の1型糖尿病の方の経験もあり、病の内容は違うが共感し頷くことも多かった。強さを感じる彼女の姿、家族が病気を認めて接していて、それを力にしている様子。その辺りに共通項を感じる。
腎臓病や血友病、小児がん、てんかん、リウマチなどなど、様々な病気の専門の医師がそれぞれの立場で書かれていて、病気を持って大人になる人も少なくはないと改めて感じた。
第7回成人先天性心疾患研究会小児科と内科の連携の話題では、先生方も患者との関係を模索している様子に
いろいろ感じるものがあり、とても興味深かった。
ホームドクターに自分の病気や体調を伝えられるように
時間を取って患者に教えることが必要、と小児科医師の発言があり、
それには長い時間がかかる、と実感のこもった言葉には、こちらも大きく頷いた。
女性の患者には女性医師が対応する方がいいのでは、には、
女医さんが増えるのを待ってはいられないと思った。
他には、不整脈やフォンタンに関する話題が多く、
何とはなしに感じていたことで、そうなんだということがあり、
また、フォローできない部分や手探りのことなどもあるが、
様々な課題に先生方が取り組んでおられることを知り、いろいろと勉強になった。
小児科と内科の連携医療
今度の研究会のテーマ。アメリカ、ドイツ、韓国の先生を招いて行われる。
患者からこのテーマを見ると…
大人になっても、子どもの頃からの通院先で継続してかかる場合が多いようだが、
小児科だと受付で摩擦がおきたり、このままでいいのかという疑問がでてくる。
手術後は外科で診療している病院があったり、
生活の都合を優先するなどの理由で、大人になってから新たに診察を受けたり、
緊急時に近所の病院へ駆け込んだりと、様々な状況も耳にする。
先天性心疾患は小児循環器科が詳しく、一般の循環器医師は知識が乏しいために、
的確な対応がされない場合もあるのだが、患者や周囲がそのことを知らなければ、
具合の悪い時にムダな時間を費やすことになるので、的確な処置がされるように願う。
というより、一人の患者を中心に支援するような体制があればいいのだけれど。
抄録をみると、少し違うかなと感じる。
(研究会の抄録は既に成人先天性心疾患ネットワークのHPに掲載されている。)
研究会の前夜には、外国の講師によるシンポジウムが、
妊娠出産、長期経過観察の問題点といったテーマで行われる。
両日とも一般でも参加できるというので、理解できないまでも、聞いてきたい。
第6回成人先天性心疾患研究会
今回初めて実際に出かけてきた。
カナダやイギリスの講師を招いての研究会、
英語での発表が多く、理解できないことの方が多かったが、
診察室では感じることができない、先生方の熱気を感じて、心強く思った。
中でいくつか感じたこと。
* 手術傷跡に関してのアンケート結果があり、
精神的ケアの観点からのアンケート、傷跡に対する感じ方は、
傷の大きさや症状の重症度とは関係ないが、男性に比べ女性の方が気にするとの内容。
自由回答欄には思いが長々綴られているものが多かったそうで、回答者の気持ちがよくわかった。
(ふだん話題にできないけれど、どこかひっかかっていることに、
スポットライトを当てられたような感じで、言葉にせずにはいられなくなるのだと思う)
傷を見た内科医が不用意なことを言うことがないようしてほしいとの会場発言もあり、
考えてくださる方があることに、ほっとした。
* 頻拍の際の心臓の電気刺激の伝わり方の画像があり、
今はこういうものまでビジュアルで見られるんだなあと。
見えないものを顕わす検査が発達していることを感じた。
翌日のシンポジウムも含めて、妊娠・出産に関する話題では、
・循環器・産婦人科・小児科といった複数の科にわたるチーム医療の体勢が必要(重要)になること、
・医師により考え方が異なること、
・ハイリスクの出産例がまだまだ少ないこと、がわかった。
そのため、一般の産婦人科では、知識の乏しさと難しさから
母体のことをまず考え、止める方向へいくことになるのではと感じる。
望みをかなえるため、できるだけの支援をと考え、実践している医師のことばを
実際に聞くことができ、とても心強く感じた。
また、患者は、ついつい自分の気持ちにばかり目を向けがちになるが、
母子に対し、具体的にどんなことが起こりうるのかを知ることができた。
母親が大変なだけでなく、産まれてくる子どもにもハードルがある。
それをどう考えるか、重い課題ではあるが、
自身で選択したいと考える患者は、知らないといけないものと思う。
(とはいえ、かなり複雑な気分になる。
前向きに考えて、難しいかもというのと、励まされるのと、3:7くらい)
心疾患の妊娠・出産のガイドラインができれば、
全国で同じ治療ができるようになるだろうとのこと。
徐々に安心できる環境が整えられているところなのだろう。
速やかに行き渡り、かなしい思いをする患者が減ることを願う。
妊娠・出産に関して
毎年東京で開かれている成人先天性心疾患研究会、
来年早々開催の次回は、研究会の翌日に妊娠・出産に関するシンポジウムが開かれ、
一般の人の参加も歓迎ときいた。(詳しくはこちらから→
http://www.jsachd.org/)
カナダやイギリスや韓国からの講師や参加者もある、国際的な集まり。
英語がわからない私には敷居は高いが、聞いてきたい。
日本循環器学会は、心疾患婦人の妊娠ガイドラインの作成を進めている。2年後にはまとめられる予定。
また、国際的なガイドラインの作成も企画されているそうだ。
女性にとって、身体にとって、当たり前に暮らす時の壁になる出来事、
身体に対する判断基準が、ようやくきちんとできる。
第4回成人先天性心疾患研究会
今回は、会長要望演題「成人期に達した患者の社会的自立の現況や阻害点」に関する発表が多かったようだ。
抄録に、アンケート結果や内容など簡単に掲載されていたが、
社会的自立を妨げる要因:男女による違いなど、興味深いものがあった。
女性は結婚や社会活動に積極的で、
妊娠・出産のリスクが高い状況でも期待と可能性を持っているのに対し、
男性は心疾患が軽度でも結婚に困難を感じていることが多いとのことだった。
私見だが、社会的に求められる責任の重さに男女差があり、
就職の場合、女性ならパート等状況に合った働き方を選択しやすいこと
結婚の場合、男性は一般的に家族を養うという立場を期待されること、
育てられ方も女性と男性では接し方が異なることが現れているのではないかと思う。
医学雑誌 小児内科 '01.5月号
特集:先天性心疾患のトータルケア
大書店の医学書コーナーで発見。ただし、一般向けではないので、読みこなせてはいない。
小児科の守備範囲が新生児から学童だったものが、今は胎児(出生前)から成人にまで広がったこと、
診断の方法やアプローチも以前とは違うこと、
成人先天性心疾患外来もできてきたが、まだ数は少ないこと、
病状の重さや仕事などの制約から大きい病院の専門医を受診できない患者も多いであろうことなど、
最近の流れと、医師の立場の認識が大雑把に理解できた。
国立小児病院で治療した18歳以上の患者へのアンケート結果(回答数382)が
QOLに関する記事にあり、興味深かった。
全体の半数余りが通院しておらず、その中で医師の指示によるものが45%。
止めた理由は、症状がない、医療機関が遠くなった、仕事が忙しいといったものという。
(思い当たることがあり、苦笑)
また、日常生活に支障がないレベルの人でも、就職していない例がかなりあるという。
この点、社会にうまく対応できないことを文献をあげて
幼少期よりの環境などが対人関係の困難さを感じさせている、
身体的なマイナスイメージが精神的ダメージにつながることも多いなどとしている。
生命保険の加入状況は、加入率59%と一般世帯の94%に比べて低く、断られたのは12%。
北米では疾患別に生命予後を予測し、それぞれの平均余命に照らし合わせた生命保険があるという。
日本の社会状況との違いを感じる。
一般の循環器内科は、多くの虚血性心疾患の診療にあたらなければならず、
数少ない上、個々に大きな違いを持つ先天性の人たちの医療まで手が回らないという。
循環器といってもギャップが大きく、それを打開するためにも作成された
「成人先天性心疾患診療ガイドライン」は、
循環器を専門としない内科医にも指針となる内容というので、
患者のためにいい診療ができるように望んでいる。
成人先天性心疾患診療ガイドライン Japanese Circulation Journal 64:supplemet W pp 1167-1204
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成人先天性心疾患ネットワーク
患者の質問にも答えるHPが名称もアドレスも新たになっています。
http://www.jsachd.org/(2001年)
ネットワーク
ハンデキャップのある人たちの就職、保険などいろいろなことを考えていこうという
ネットワークづくりが、アメリカから呼びかけられています。
案内も何も英語なので、筆者にはお手上げなのが残念。
直接の案内ではありませんが、興味のある方は、こちらをご覧ください。
http://www.mchbhrtw.org
成人先天性心疾患のホームページ
2000年6月下旬、開設された。
患者の質問に答えるコーナーも作成中とのこと。
成人先天性心疾患研究会
'99年1月に第1回、今年1月には2回目が開催され、
「成人先天性心疾患診療ガイドライン」作成や
ネットワークづくりなどが行われている様子。
まだ広く知られていない分野だが、少しずつ、進んでいるようだ。
専門医だけではフォローできない患者のためになるよう、順調に広がっていくことを願う。
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医学雑誌 Heart View '99.7月号
特集:小児期からキャリーオーバーされる心疾患
医学書コーナーがある大きな書店で、バックナンバーで並んでいたのを発見。
専門的な内容が多く、全ては読み取れないが、大雑把には、以前聴いた講演の内容とほぼ同じ。([…医師の講演より]参照)
改めて驚いたこと。
国立循環器病センター小児科での成人に達した数のデータがあった。
およそ18,000件の解析例の中、成人に達したのは'78年-1000余り、'88年-1500、'98年-3500。
増え方が多くなっているのは難しい手術ができるようになったためか。
重度とされる三尖弁閉鎖症(自分の病名)を見る(残念ながら病院が違うので例の中に含まれていないが)。
'78年-修復術後1=計1例、'88年-手術未3,姑息術1,修復術2=計6例、'98年-手術未2,姑息術2,修復術7=計11例。
この病名は、先天性心疾患の内、確か100人に1人程度のはず。そう考えると、11/3500というのは少ない。
女子医大の場合、症例はこれより多いと思われるが、それでも参考にできる数があまりに少なく、予後もはっきりしたことが言えないことがよくわかった。
ちょっと大げさに言うならば、歴史を作るのは、私たちひとりひとり。
他に、妊娠に関してやチアノーゼの身体への影響など、興味深い話題があった。
なんとはなく疑問に感じていたことが、ようやく明らかにされているように思えた。
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