◎成人先天性心疾患(Adult Congenital Heart Disease)とは何か
先天性心疾患を持ち、年齢が15あるいは18歳以上の患者。手術の有無は問わない。
つまり、生まれつきの心臓病を持ち、小児期を乗り越え成人となった人。
◎小児心疾患の歴史
・外科以前
心疾患の生産児に対する頻度:0.8-1%
乳児期までの死亡率60%
成人まで生存15%
・外科以降
'38年 動脈管結紮術
'45 大動脈縮窄切除術、ブレロックタウシッヒ吻合術
'50半ば 人工心肺
'53 心房中隔欠損、'55 心室中隔欠損
'63 マスタード術、'67 ラステリ術
'71 フォンタン術、'75 ジャテン術
(複雑な手術が行われるようになり、二十数年がたったところ)
◎日本、千葉県の成人先天性心疾患患者の数(推計)
先天性心疾患生産児:11,800人
成人となる確率85%以上(開心術:年7,000件)
成人先天性心疾患患者数:200,000人、増加率4〜5%(?)
千葉県(日本の人口の5%)患者数10,000人
◎患者の内訳
手術、カテーテル治療後:75%
未手術:25%
◎診察するセンター
・外来の名称(日本)
先天性心疾患外来:千葉県循環器センター
成育医療センター:国立小児病院
・担当医は?
成人循環器医(内科医)と小児科医が担当が理想的
わが国では、先天性心疾患に興味を持つ循環器内科医は殆どいない
小児循環器医では内科(成人)患者の知識が乏しい
外科医は大人子どもの差はあまりないため、日本では外科が診ていることもある
・理想的なスタッフ(米国の例)
成人・小児・外科医はもちろんだが、専任の看護婦がいる
精神科、産婦人科、血液科医師などとの緊密な連絡網
外来-成人あるいは小児循環器外来。入院-成人循環器病棟
◎患者の主な入院理由(米国の例)
手術、カテーテル治療
不整脈
チアノーゼ関連の問題:痛風、喀血、腎臓疾患、骨疾患、胆石
妊娠
感染性心内膜炎
心不全
非心臓手術
〇千葉県の場合
千葉県循環器センター(旧県立鶴舞病院)にて、成人先天性心疾患外来を開設。
これは、県立こども病院の受け皿でもある。
・問題点
交通の不便さ
産婦人科がなく、精神科など関連各科が少ない
人材がいない、
長年かかってきた小児科医は経過を熟知しているため、患者や両親が離れにくい
・こどもに病気をどう伝えるか
こども病院では(家族の考え方もあるが)14歳のとき伝えている
◎米国の症例から
・50歳男性。16歳でファロー四徴手術後、他の人と同様に動けるようになり、その後検診へ行かなくなる。
最近、階段昇降にて息切れ、不整な頻脈を自覚。近医受診、高血圧も指摘される。
肺動脈・大動脈弁逆流などで、弁置換他、治療。
・32歳女性。10歳で大動脈縮窄手術。その後順調なため病院受診せず。事務系統の仕事に就いており、24歳の健康診断時に心雑音を指摘されたが放置。
27歳、妊娠。大動脈弁狭窄、高血圧を認め、このままの妊娠継続は困難とされ、妊娠5ヶ月時大動脈狭窄に対するバルーン形成術。
出産後、大動脈弁置換(生体弁)。その後2回出産。
◎先天性心疾患手術は根治か?
根治手術=動脈管開存、心房中隔欠損(術後の注意不要)
修復手術=ファロー四徴、完全大血管転換
姑息手術=ブレロック・タウシッヒ吻合術
◎感染性心内膜炎
危険の高い患者=吻合術後、人工弁・生体弁置換後、大動脈二尖弁、心外導管
感染源=歯科処置、にきび、妊娠
◎妊娠
循環器へ負荷がかかり、妊娠をきっかけに体調が悪化することも多く、注意が必要。
・妊娠時、運動時と同様の身体変化
全血液量および心拍出量増加:正常時の140-150%
相対的貧血、末梢血管の拡張、静脈血圧上昇
・出産時の血液量変化
子宮収縮:500ml増加
経膣分娩:500ml減少、帝王切開:900ml減少
◎一般的な手術時の注意
要注意=肺高血圧、心不全。人工弁装着。チアノーゼ疾患。
◎不整脈
年齢とともに増加
(筆者注:これは健康でも同様と思う。
心疾患があることの影響は、どの程度なのか、今一つ掴めなかった)
◎精神心理的問題
抑うつ傾向、パニック症候群、爪かみ、髪いじり。
(筆者注:短所ではあるが、マイナス部分だけを見ないようにしたいもの)
◆フォンタン術
・長期的な問題
不整脈(心房性のもの)。
血流がスムーズでないための問題(部分的に姿勢を変えるなど、動く工夫が必要-
筆者注:行儀悪いなどの抑制がなければ、本人が自然に改善の工夫をするもの)、
妊娠中血液が固まりやすい。
◆他
・成人ではじめての手術→成績は変わらない。
・成人病→ふだんの運動量が少ないために、多い。チアノーゼ性疾患の場合はコレステロールが低い。
・運動能力→激しいものはよくない。特に血圧の上がる動作(ウエイトリフティング、腕立て伏せなど)は、よくない。
講師の先生が研修されたアメリカの例が挙げられました。
スタッフに、看護婦も専任がいること、
精神科、産婦人科などとも連絡が取り合えることになっているそうで、
最先端でもあるのでしょうが、羨ましさを感じます。
特に女性として。
今回始めて医師の立場から、避妊方法で器具を挿入する方法だと体に傷がつくので(感染症などの心配だったかな)薦められないということや、妊娠・出産時の危険がどういうものか、何故なのか、具体的に聞くことができ、すごく納得したし、産婦人科との連携の必要性を強く感じました。
こんな話題、診察室で面と向かってするのはちょっと難しい。
そして、精神科。
事件の被害者の心の傷は話題になっても、病院といういわば不自然な場所ですごしたことの影響が、あまり大きな話題にならないこと、ずっと不思議に思ってきました。海外での臓器移植の際のカウンセラーの活躍をみますが、それ以外でも必要でしょう。かたちにならないことも不思議です。
日本は特に、援助が必要なときに頼れる場が少なく、適切にフォローできる場に巡り会えないことから困っている方も頼っていいものだという意識に至らない、そんな状況にあると、常々感じるところです。当たり前に力を貸せる、借りられるようでありたいと思います。
因みに、抑うつなどが挙げられたときは、思い当たることもあり苦笑しましたが、あまりない体験をしたことと、常に心の片隅に不安を抱えていますので、ある意味当然といえるのではないでしょうか。気持ちのやり場、発散の仕方がわからないのだと思います。
米国のフォロー体制には、たくさんのスタッフが関わっている。うまく機能しているかは別として、支援者の姿が見えることだけでも安心につながるものと思います。医師の立場の方から、この話を聴くことができたことで、考えてくれる方がいるのだと、安心できました。
今、積極的治療の必要な方々は、医療とつながりを持っています。医療とつながりが切れた(つながりを切った)方たちを受入れられ、安心できる体制ができるよう願っています。