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■ '08.夏 高崎・郡山・富山〜小さな旅・大きな旅

会いたいものがあって、余裕のないまま出かけた。
高崎の植物園、郡山の学会、富山の交流会、気がつけばどれも、山?
  高崎
ある週末、日帰りで高崎市染料植物園を目指した。
古来の染色に関する展示があり、今回の企画展に、高松塚古墳に描かれた女性衣装を再現した品がある。

上野から高崎線で2時間。高崎から市内循環の小型バス、ぐるりんで30分。
定員20名足らずのバスは、細道曲がり道を身軽にこなし、坂道を上へ。
かなりの山、市街を見下ろす雰囲気は、暑さもあいまって、一昨年夏の高知・牧野植物園を彷彿とさせる。
やっと目的地、降りたのは私だけ。そっけない門を見つけて入ると、あるのは曲がっていく下り坂の道だけ。
大分下ってやっと建物が見えた。工芸館だ。紫の展示に合わせて、外に鉢植えのムラサキ(根が染料になる植物)、純白の花が咲いていた。いい時期に来られてよかった。

展示室は思ったより狭く、暗い。明かりで色の輝きも違うだろうに、退色するからなのか、残念だった。
官位の色の変遷のパネル。昔の資料をもとに再現した反物。あでやかな、襲の色目。現代の着物も。
復元衣装は別室の蛍光灯の下、緑、緋、黄とともにあった。最高位の紫は、やはり輝きが違う。
無位の黄色は別として、落ち着いた品を感じる。陽光ではどんななんだろう?
貝紫の糸、紫根の色とはまた違う色合い。
透けるほど薄い絹布に、染め方の違う紫のグラデーション。
ちょっとした空気の流れに揺れる布を見ていくうち、鉱物の媒染剤のは何かが違うように感じ、何だろうと行ったり来たり。
気のせいとも思えるごく僅かの差、何かはわからないけど、鉱物は昔は手に入りにくいはず、昔の人が当たり前に目にしていたものは今とは違うのだろう。
そういえば現代作品の濃い紫の着物、なんだか痛々しいと感じた。草木染めだけど媒染剤は薬剤かもしれない。
古来の植物の力を引き出した染め方に囲まれると、別の方法のものは際立って別物に感じられるのかもと思った。
先人の知恵と、復元し伝える人の意志に頭の下がる思いを持ちながら、堪能。

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ロビーで一休みして、工芸館を後にした。
工芸館を出て、植物園散策、どうしよう?
少し先の分かれ道の一方はきつい勾配の下り。もう一方も合流するはず。
ここまでで、建物2階分位の高さを下っていたから、帰りが怖い。
しかも、ふと見たケータイはアンテナ1本。人も殆どいない。…下手すると遭難するわ。
とはいえ、下りの向こうに建物が見えたので、とりあえず行ってみた。
喫茶があるはずが、休み…。自販機があって、のんびり座れるだけ。
下階は温室だけど、エレベーターもなさそうでパス。
一服してもとの道へ、木々や説明を見ながらのんびりと。
サルスベリなんかも、近年染色に使われるようになったそう。へぇ〜と思いながら。
平らの道へ進むとやはり下りに。先に行った人も戻ってくる。
どこも車椅子でも動き難い勾配、ここは健脚でないと厳しいなあとつくづく。
樹々  休息所休憩所もあるけれど。

でも、白く着飾った姿のいい樹に会った。
満開のヤマボウシ。街路樹で見かけるハナミズキの親戚、
ハナミズキの和名はアメリカヤマボウシ、花びらの先は丸っこくて先端が凹んでるけど、ヤマボウシは先端が尖り、全体が清楚な印象。
なんだかしばらく離れ難かった。
ヤマボウシ

来た道を登っていく。
工芸館近くに吊り橋へ向かう道がある。
ロビーから見た橋の様子はいい眺めだった。巨大な観音様もあった。
逆側には、駐車場へ向かう細道も下っている。
どちらもパワーが要りそうな道。もらった案内図は平面だけで距離すらわからない。
こんな難所&バリアフルだったとは…。体力があればと思わずにいられなかった。
紫のチケット   ↑先頭へ 
高崎線の車窓は、東京の北の工場地域から、埼玉の都市部を過ぎ、苗の植わった小さな田んぼや畑地が増えて、トウモロコシ畑、麦畑に。麦は実りきったように倒れていたりして、麦秋の風景。
高崎で目にしたのは、蒟蒻畑電車。車両正面にはマンナンライフの文字が…。インパクトあった〜!
隣の、レンガ風車体の富岡製糸工場を世界遺産に電車とともに、上信電鉄を(というより群馬を?)担っているらしい。
市内循環バスぐるりん観音山線、降雪や路面凍結時は、山の方は運休だとか。
それも頷ける道の険しさ、揺られていて疲れた。
でも、観音山は地元の信仰の場みたい。途中から乗ったおばちゃんは降り際、お参りして次のバスまでに戻って来られるか聞いていた。
国立病院の玄関のところまで入ったり、車一台の幅の細道を行ったり、きめ細やかに地元を回る、ぐるりん。愛らしい存在。

我が家から上野まで片道約1時間、高崎線2時間、バス30分。 乗った〜、行った〜という感じ。
  郡山
上野から新幹線の1時間余りはあっという間。 関東圏の高崎より近い、東北の郡山。
駅はコンパクトで少しそっけない印象。会津へ行く電車も出る乗換駅なのに。
新幹線改札を出て少し行くと、名品店がのんびりおっとり構えている。
駅中にも、外へ出てすぐ目に付くのも、コンビニ。なんだかこの地を印象付けるものが乏しい。
駅ビルの本屋では、なぜか地図も見当たらず、この地らしさは、お土産品しかわからず。
バスに乗る。バスターミナルもコンパクト、機能的でよい。
大型のバスは後ろ乗り、驚いたのは、始発でも整理券が出ること。料金表示も整理券なしの表示がない。
千葉圏は(というより、行ったことのある場所は)、最初は整理券なし、が当たり前なので所変わればですね。

密度の濃い行事に参加したゆえ、街を見て歩くゆとりがなかったけれど。
ホテルの立食の会で、地元であがった魚や、こづゆという根菜たっぷりの郷土のお汁などをいただいて、ほっこり。
こういう時、お酒がわからないのはもったいないなあと思いながら。

中心部の通りの店構えなどは、さすが古くからある街の雰囲気を伝えていた。
時間の流れが幾分都会とは違う。そんなことを僅かに感じて、丸2日間過ごした街を後にした。

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  富山
連休ゆえに指定席がとれず、名古屋回りで行くことに。
それも早い時間の新幹線しかなく、見事に乗り遅れて、後続ののぞみに滑り込みセーフ。
はじめから難クセのついた旅行きだったけれど、名古屋からの特急は、空席の多い、のんびりした時間。
車窓をみれば、緑がまぶしい。車内販売の釜飯などいただきながら、のんびりを楽しむ。
終点に近づくにつれ、私の身近ではあまり見られない、ねむの木、ハスの花が目に付いた。

富山駅から、送迎バスでしばらくいったところにある宿で、年一度の集まり。
懐かしい顔、初めての方に会い、地元のスタッフのもてなしを受け、いい時間を過ごす。
お料理が豪華、魚介類、山の野菜、釜のご飯。おいしいものたくさん。たくさんありすぎて、ああ、もったいない・・・。

富山といえば、薬売り。ますのすし。蜃気楼に市電にライトレール。
ますのすしは、工場見学、会のオプションツアーでささっと。
漢方薬は、駅近くのビルの薬膳カフェの食事で雰囲気を味わう。
隣の店に風呂屋でおなじみケロヨンの黄色い洗面器やストラップ、薬等あり。さすが。
土産物屋で、高岡漆器、黒部や立山の景色など美しいものを堪能。
蜃気楼は時期でないようだし、ライトレールどころか、そこに見える市電も乗る余裕がなくて、残念。
心残りとあいまって、またぜひ来たい、と決意。

帰りのしらさぎは、とにかくラクにと思って決めた、初めて乗るグリーン車。3列の席はゆったり快適。
岐阜に近づき、名古屋に迫るにつれ、車窓は都会の雰囲気が濃くなる。
新幹線へ乗換える時は、時間の流れも完全に都会的な早足となる。
見慣れた街に戻っていき、ホッとしながら、余韻を楽しんだ。

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