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■ '07.春 弘前

ゴールデンウィーク、さくらまつりの弘前公園をめざしての旅。
ホテルがみつからず、前夜にようやくネットで一日目の宿を予約し、二日目は最悪青森泊になるかと思いながらの出発。
春満喫のはずが、こぎん刺し探訪になっていました。

青森行き / 芦野公園へ / 弘前の街 / こぎんと菱刺し / りんご
  日中の青森行き
東京駅でお弁当を買い、昼のはやてに乗りこむ。
前回の青森行きは夜の移動だったから、陽射しと新緑のまぶしい車窓を眺めていると、とても贅沢な気分。
短い乗り換え時間、急いで特急つがるに乗り継ぐと、すぐに発車。
広々とした景色の中に、満開のこぶし、桜・・・・。千葉では過ぎていった春がまだここに。
青森からは乗客がぐっと減り、17時前、夕方のまぶしさの中、終点の弘前に到着。
駅前には桜が一本見えるだけで、弘前公園は遠そう。
ホテルに入ると、ロビーのテーブルには、こぎん刺しのテーブルセンターがある。
四方が透明な冷蔵ケースに赤いりんごが一個100円、まるでジュースが並んでいるように入っている。
ああ、ここは弘前。実感。
  味わい
駅の観光案内で空室があるかもと教えてもらったホテルにいくつか電話をするも、満室。
ため息つきながらネットも見たら、今電話したばかりのホテルの部屋が出ていたので、え?!と思いつつ予約。
ほっとしながら、翌日の予定を検討して迷う。疲れていると決まるものも決められない。
一休みして、そばの和食処へ夕食に出る。迷いつつ、海の幸の定食を頼む。
茶碗蒸しの中の緑色の丸いものがぎんなんではなくてエンドウ豆、それがうす甘い味だったのにはびっくり。
ところ変われば、なのかしら。
新鮮な魚もよかったけれど、デザートがすてき。
お皿との色合いもいい、桜のアイスは、細かく刻んだ葉も入っていて、口に入れるとほどよくかすかに香る。
桜をこんな風に味わえるなんて。
 ■器との色合いもすてき

  芦野公園へ
朝、迷いながら遠征を決定。
前に乗った津軽鉄道に乗りたいのもあるけれど、どうも青森に来ると行け行けで止まらなくなるらしい。


■弘前駅のオブジェ(こぎん模様や津軽塗、りんごの品種名などあしらってある)

目指すは芦野公園駅そばの民俗資料館。荷物を預けて、弘前フリーパスを買って、出発。
まずは五所川原へ向かう五能腺に乗る。ローカル線は、時間が止まっているかと思うほどゆったり。
都会と違って人家が少なく広々した風景も、ゆったり感を増している。
沿線には、競うようにして咲く水仙、満開のタンポポ、枝いっぱいのレンギョウ、桜の花。
繊細に広がる樹の枝には若緑の葉。それぞれ春がいっぱい。

五所川原駅で少し時間があったので、一度外に出る。
津軽鉄道の入り口には、レールオーナーや、販売しているグッズの説明。
グッズにはレールのキーホルダーもあって、まさに鉄道が売り。
何か買おうかなと思いながら、窓口が混んでいたので後でいいかなと、列車に向かう。
(結局、後では買う余裕がなかった…。残念!)

再会した津軽鉄道のオレンジ色の列車、観光客がたくさん乗り込む。
前回はなかった車内放送のご注意は、観光客のいるときだけあるのかな。
車窓を楽しみつつ、のんびりと進む列車の時間を楽しむ。
芦野公園に差しかかって、みごとな桜の樹々に息を呑む。
ここにもさくらまつりがあったんだ、知らなかった。


駅前には、出店がたくさん。うららかな陽射しの下、家族連れや子どもたち。
この中で資料館へ行く人なんていないだろうなあと思ったら、案の定。
公園内でも、にぎやかな場所から外れた資料館はひとけがなく、入館者は私だけ。
森林鉄道の部屋は説明がしっかりしているけれど、他は古文書から何から、ほぼ説明なし。
資料館の目的がこれでわかるというもの。履き替えたスリッパの音が高く響く。
昔普通に使われていた道具が並んでいる。農具、古い頑丈そうな金庫、茶碗や食器類・・・、時間が止まる。
藍色縅の鎧をまとった老若の人形、濃藍の糸が美しい。天然染めだろうか。

そして、お目当てのこぎんの着物は2着。
三縞こぎんと、肩の部分が地刺しの縞のものと。
どちらもざっくりした感じの生地が色あせている。
そうだ、肩が地刺しのこぎん、祭りで着用している写真を見たことがあった。
だとしたら、男性が着ていたはずだけど、目の前のこぎんは小さく思える。
本に載っていた古い写真のものとは違うけれど、きっと近くで作られたもの。
出会えたことが、なんだかうれしかった。

資料館から出て、近くを散策。
資料館の横の方に風格あるものが・・・
■招魂堂 (何の魂を招いているの?)    

近くに石碑が3つ並んでいたのでよく見ると、左は陸軍の方のお墓、真ん中は芭蕉の句碑、右はよくわからなかった。
別のところにも大きな石碑が並んでいて、戦のものらしいけれど、読んでもよくわからない。
雑多なものが、一緒にある不思議。

池の方に歩いていく。うららかな景色。
芦野公園
■左の建物はお手洗い

芦野公園
■池には睡蓮

ベンチでしばしのんびり。いい日和にゆったり。

駅前は人ごみ。まだ次の電車までずいぶん時間がある。さてどうしよう。
当てもなくうろうろ。まつりで歩くなんてずいぶん久しぶりで、こんなお店があるんだ、と思いながら。
単線の踏切には警報機も遮断機もなく、線路に入り込む人もあり。

ブラブラと奥へと歩いていく。湖やつり橋があるらしいのだけど・・・。
人が少なくなって、起伏の出てきた所で見えてきた。
ああ、起伏がなければもっと近くに、できたら橋まで行ってみたかったなあ。
芦野湖 芦野湖アップ
■芦野湖 ボートや遊覧船も気持ちよさそう

再び駅へ。狭い待合所はすでに満員、ホームに座り込む人たち。
電車の時間が近づくと、小さなホームは通勤ラッシュ並みに人でいっぱい。
そして、待っているとなかなか来ない列車が、ようやく到着。
近くの席に座ってホッとしながら、名残惜しみつつ、芦野公園を後にした。
今度は混み過ぎていて車窓が見えない…、けど運転席近くの楽しみ。
ワンマンの運転士さんは、駅へ着くとホームへ出たり、降りそびれる人がいないか車内を見回したり、大忙し、
都会の電車にはない光景がほほえましい。
五所川原へ戻り、弘前へと帰ってきた。

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  弘前の街

ホテルに向かう道で、ねぷたに遭遇、交差点のところでしばし通り過ぎるのを待った。
まだ日のある時間、明かりも熱気もなかったけれど、運ばれるのを思わず見送っていた。
(夜、お城で出番があったらしい。後でニュースで知った)
待っている間、ふと道の向かいを見上げたら、変な看板が・・・

■「進の自転」って何ぞな?


翌朝、ホテルを出て、途中循環バスにのってもいいつもりで、お城方面へ歩いていく。
途中、大型書店があったので寄り、地元の本をしばし探索。
同じ通りにあった、こぎんの図案集を出している手芸店に入り、しばし時をすごす。
由緒正しいこぎん模様のキットを初めてみて、さすがと思ったり、
古作の図案集の本、袋物の本、がま口の口金やこぎん刺しの小物など、こぎんを生かす品揃え。
塗りもののブローチ台も思わず買った。ピンは別売り。思いがけなく散財。

通りには風格を感じる店も多くて、さすがに古くからある街だなあと思いながら。
花曇りの寒くはない気候に助けられ、気がつくと街の雰囲気を味わいながら歩き続けていた。
疲れていたけれど、いつしかお堀のところへ。桜並木が見事、まさに満開!
堀の桜
■お堀の両側から枝を差し出す桜

花一杯
■近づけないのが残念

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観光館に入り、中のお店で昼食。
そばとどちらにしようと迷いつつ弁当を頼んだら、紙容器で出てきた。
あらら、そばの方が正解だったかな?

2階の工芸品の展示に行くと、誰もいない。
津軽塗りの工程や作品、ぶなこやアケビ細工、こぎんの古作や復元品、タペストリーを堪能。
お土産をみて、外へ出る。バスの時間まで少しだけ、寄って行こう。

追手門
■見事な枝垂桜
追手門全景
■追手門

門の中をのぞいたら、桜の花で満ちている。
こちらでは、満開でも散り落ちる花びらはなく、花も枝が見えないくらいついている。
だから、門の中はまさに桜花であふれそうにみえた。
天守閣まで行きたかったけれど、時間も体力もない。残念。

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  こぎんと菱刺し

花見渋滞か、だいぶ遅れて着いたバスに乗って、めざすは弘前こぎん研究所。
ねぶた村も行きたかったけれど、行ってみたい度はこちらが大きかった。
最寄のバス停で降りると、そこは普通の住宅街、何だか迷いそうな。
郵便局が見えたので、切手を買いがてら局員さんに尋ねると、丁寧に地図を書いて教えてくれた。
バス通りから脇道に入り、住宅街の中に紛れそうな、昭和初期の建物。
入り口を入ってみても、人の姿が見えず、ウロウロ。
連絡しないで来てしまったから、私のミスなのだけど。
建築模型や資料が展示されているのを見て、周りを見渡すと、その時代の建物だなあと。
同じ時代に建てられた学校にいたことがあって、窓からの光と壁の醸し出す雰囲気が似ていて、懐かしかった。
ここは、建築家の建物としても知る人ぞ知る場所なので、そちらから来たと思われる人も来て見ていた。
しかし、入っていってもいいものやら、と迷いつつしばし佇んでいると、観光人と案内人と思われる人たちがやってきた。
客が帰っていったので、ここの人らしい方に声をかけると、中を見せていただけるとのこと。
ああよかった、来たかいがあった。

2階へ行き、部屋を見ると、織機や糸巻き。女性が糸を巻いて枷をつくっていた。
わあ、工房だなあ。と思っていると、案内のおばさんが、幅の小さな織機に向かい、実演してくださった。
糸を力強く引いて、筬を打ち込んで、反対方向に糸を入れて・・・。かなりの力仕事ということが見て取れる。
濃紺の太いで織った布、ネクタイの生地だという。ここにこぎんを刺していくんだね。
台の上には、刺された布が束ねておいてあって、アイロンがけを待っている。
布を広げ、傍らのバケツの水に浸した手ぬぐいを置いて、アイロンをかけていく。
持たせてもらったアイロンの重いこと。仕事となると重労働だなあと、実感する。
刺し手により、アイロンがかけやすい、という。
作業していく中で束がいくつか解かれていき、その理由がよく分かった。
刺し糸で波打っている布と平らなのとがあるのだ。
私は刺し手としては未熟だなあ、きっと。

いろいろな色の布の中で、渋い麻色の布で手を止めて、昔の麻だと教わった。
外国製だという他の生地とは、確かに風合いが違うその布は、繊細な感じがした。
今は麻の栽培の制限が厳しらしく、もうできないだろうと思うととても残念。
住宅街になったから、布を染めることもできないのだという。
ということは、以前は、製品作りの殆どがここで行われていたのだ。
時代の流れとはいえ、寂しく感じる。

ゆるやかに時間が流れている。
いつまでもそこにいたい気分になったけれど、時間もあるので、残念だけど辞した。
バス停まで戻ると、通りの先に薄緑色のバスの後ろ姿が見えた。
待つにはちょっと寂しすぎる風景で、タクシーを拾って駅に戻った。

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帰途、電車の乗り継ぎの八戸で少し時間があり、ユートリーに寄った。
菱刺しと裂織りが体験できるコーナーがあって、残念ながらやっていなかったけれど、フェンス越しに覗いてきた。
建物の扉の足元には、菱刺し模様があしらってあった。
こぎん体験は駅から足を伸ばさないとならないけれど、菱刺しは華やかなせいか、扱いが違うなあと感じた。
こちらもゆっくりみたいと思いながら、今回僅かな時間たったけど足を伸ばせてよかったとつくづく。
  りんごに見送られ
幾度も通った弘前駅は、通路で津軽三味線の演奏があった。
地元のおばさんたちが赤紫蘇ジュースや漬物を売っていたし、
もちろん、りんごジュースやら青森グッズ、駅ビルにはお土産もたくさん。
そしてホームには・・・
■出発前のひととき、車窓からみた巨大りんご

青森・弘前に魅了され、今回行かれなかった弘前城、ねぶた村、こぎん体験のできる青森アスパムなどなど行きたいところがまた増えている。
弘前公園の桜とともに、芦野公園も桜百選に選ばれていたと後で知り、気づかずに贅沢な行程だったのだなあと。
ラッキーも重なった、弘前の旅でした。

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