素人的説明

 
模式図
全身より       肺より
正常の心臓
 肺へ     全身へ
通常は(左図)、青で示す静脈血と赤で示す動脈血と完全に分かれています。
(図では動脈の弁2つを省略しています)
三尖弁閉鎖症
全身より       肺より
術前
肺へ     全身へ
三尖弁閉鎖症の場合、
三尖弁があるはずの部分が壁になっており、全身から戻った静脈血が肺へまっすぐ流れません。
心房・心室とも左右を隔てる壁に穴が開いているため(1),(2)、そこから迂回する形となります。
大動脈に静脈血が交じるため、全身へ酸素を供給する効率が悪く、一方で右心室が成長せず、右室低形成の状態(a)となります。
フォンタン術後
全身より       肺より
術後
肺へ       全身へ
昔のフォンタン手術では、心房(1)心室(2)の穴をふさぎ、肺へ行く動脈を直接心房へつなぎます(3)。
心室は全く使われない状態(茶色で示す)ですが、静脈血と動脈血が完全に分かれました。
心室は血液を送り出す力になる場所なので、ポンプとしての機能には、問題があります。しかし、これ以上の修復はこの心臓ではちょっと無理。
なお、肺動脈の状況により、細部はそれぞれ異なると思いますが、私の場合は人工的なものは全く使っていません。

病気の説明に「三尖弁を作ったの?」と機械的に考えられる事もありますが、右室低形成など(この心臓で過ごした歴史)があります。同じ病名でも、細かな状況はそれぞれ違います。機械のようにはいきません。
再手術 (TCPC変換術)
全身より       肺より
 TCPC型フォンタン
肺へ       全身へ
(1)全身から戻った静脈血を直接肺動脈につなぐ(間に人工血管を使う)
(2)心房の壁を取り払って、全体を一つの心房にする。

右心房を使うフォンタンは、長年経つと右心房が拡大するので、血流のよどみができます。
(私は,そこに血栓ができ,薬では溶けなかった。それを除くための手術でもあった)
静脈血を肺動脈に直接つなぐと、血流のよどみ=流れのロスがなくなり、血流がよくなります。
血流がスムーズになるので、血液ポンプの負担が減り、それまでより少し楽になります。

この方法は、健康な心臓のかたちを目指していたら思いつかないものでしょう。
前回はリフォーム(修繕)、今回はリノベーション、そんな違いでしょうか。

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ひとこと:
最近適用例が多いフォンタン術ですが、右心室を使わないもの全般を指すようで、
元々の心臓のかたちや手術時期によってかなり違いがあるようです。
心房を使わずに下大静脈血を肺動脈に直接繋ぐ方法(TCPC)もあります。
私がフォンタン初期に行った時は、肺動脈を右心房につなぐもの、
新たな方式は、適用範囲が狭い初期の方式に対して、
単心房など、より複雑な病気に対応する策でもあるのでしょう。
人工的な材料を使うことも多くなりました。
そのため、フォンタンだからこうだと、一概に言えなくなっている気がします。

なお、初期の方法は、心房に負担がかかることから長期経過後の合併症が明らかになっています。
力が不足している心臓を動かしている限り、負担はつきものですから、それは宿命なのでしょう。
(それで再手術となった訳です)
再手術後も、血液ポンプの機能がよくなるわけではありません。
労わりつつ、やりたいことと折り合いをつけつつ、過ごしていきたいものです。